【リミックスについて】
リミックスは、AIを架空の作家に見立て、異なる二つの名作を掛け合わせる実験的な掌編小説群です。「作品Aの哲学・設定」を「作品Bの文体」で描くとどうなるか? そんな空想を出発点に、AIが緻密な論理と模倣で再構築した物語をお届けします。
原作への敬意と遊び心を込めたパロディ作品として、AIが生み出す奇妙な化学反応をお楽しみください。
※本カテゴリの作品はすべてAIによって生成されたフィクションであり、実在の作家・作品とは異なる独自の解釈を含みます。
概要
『黒猫』(ポー) × 『猫』(宮沢賢治)
私の魂の深奥には、かつて透明な硝子細工のような、あるいは凍てつく冬の夜の星気のような、清冽な美徳が宿っていた。私は幼少の時分から、生きとし生けるものへの奇妙なほど繊細な同情心を抱いており、とりわけその柔らかな毛並みと、銀河を凝縮したような瞳を持つ猫という生き物に対しては、一種の宗教的な崇拝すら捧げていたのである。私の書斎には、碧(あお)いトパーズの瞳を持った一匹の巨大な黒猫が、まるで影の一部が実体化したかのように鎮座していた。その名は「プルート」。彼は私の忠実な書記官であり、私がペンを走らせる傍らで、静かに宇宙の真理を監視する賢者のごとき存在であった。
しかし、私の精神の歯車に、ある時、微細だが決定的な狂いが生じた。それは「天邪鬼の情動」とでも呼ぶべき、冷徹かつ不可解な衝動である。人間という存在は、自らが完成された幸福の頂点に立つとき、あえてその足元の梯子を外そうとする不可解な習性を持っている。私は、私が最も愛するものを、その愛ゆえに蹂躙し、破壊したいという、暗く澱んだ欲望に支配されるようになった。それは、イーハトーヴの青い空が不意に濁った重油を流し込んだかのように、唐突で、かつ不可逆的な変化であった。
ある夜、酒場から戻った私は、私を避けるような仕草を見せたプルートを捕らえ、その美しい喉元を鷲掴みにした。猫は怯え、私の手に牙を立てた。その瞬間、私の内にあった残虐な知性が、歓喜の産声を上げた。私は外套のポケットから事務用の鋭利な剃刀を取り出し、躊躇することなく、その琥珀色の瞳のひとつを眼窩から抉り出したのである。滴り落ちる血は、インク瓶から溢れた黒ずんだ嘘のように、書斎の床を汚した。翌朝、私は鏡の前に立ち、己の所業を冷徹に分析したが、そこには悔恨の情など微塵もなかった。ただ、欠落した瞳の奥に広がる空虚な闇が、私という存在を静かに裁いているような不快感だけが残った。
私の堕落は加速した。私はプルートを、かつて愛を注いだその首を、庭の古びた無花果(いちじく)の枝に吊るした。それは、一編の詩を完結させるような、あるいは完璧な官僚的処理を遂行するような、冷ややかな確信に基づいた死刑執行であった。猫の体は、冷たい秋の風に吹かれ、まるで振り子のように、私の罪の時間を刻み続けた。
その夜、私の家は原因不明の火災に見舞われた。燃え盛る炎は、私の過去も、地位も、蔵書も、すべてを無慈悲な灰へと変えた。焼け跡に残った唯一の壁面には、奇妙なことに、首に縄を巻きつけた巨大な猫の影が、白い漆喰に焼き付いていた。それは、宇宙が私の犯罪に対して突きつけた、巨大な告発状であった。
やがて私は、灰色の街の片隅で、死んだプルートに酷似した、しかし胸元に一つだけ、絞首台の形に似た不気味な白い斑点を持つ猫を拾った。その猫は、私の後を影のように追い回し、私の新しい住居へと入り込んだ。私はその猫を、あるいはその猫が象徴する「罪の再現」を憎悪した。妻は、その猫を慈しみ、私に穏やかな生活を取り戻させようと努めたが、彼女の慈愛は、私の内に潜む「天邪鬼」をさらに激しく挑発するだけだった。
ある日、地下室への階段を降りる際、猫が私の足にまとわりついた。私は憤怒に駆られ、手近にあった手斧を振り上げた。それを止めようとした妻の脳天に、私は斧を振り下ろした。彼女は悲鳴を上げる暇もなく、塵ひとつの音も立てずに絶命した。私は死体を隠蔽するために、地下室のレンガ壁の背後に彼女を塗り込むことにした。それは、書類を正確なファイルに収納するような、完璧な事務作業であった。私はレンガを一つずつ積み上げ、その隙間を丁寧に埋め、表面を周囲の壁と見分けがつかないように塗り固めた。作業を終えたとき、私は完璧な勝利を確信した。猫はどこかへ消え去り、私は久しぶりに、冷たく澄み切った安眠を得ることができた。
数日後、当局の役人たちが調査のために地下室を訪れた。私は微塵の動揺も見せず、自らの完璧な隠蔽工作を誇示するかのように、壁をステッキで軽く叩いた。
「ご覧なさい、この壁の堅牢さを。ここには何一つ、不確かなものなど存在しません」
その時である。壁の向こう側から、聞いたこともないような異様な声が響き渡った。それは、幼児のすすり泣きが地獄の底で増幅されたような、あるいは宇宙の深淵から届く絶望の報告書のような、凄まじい叫びであった。
役人たちが無言で壁を崩し始めると、そこには、腐敗の途上にある妻の死体が、直立したまま現れた。そして、その腐りかけた頭蓋の上には、赤く燃え盛る一つの眼と、絞首台の斑点を持つあの怪物が鎮座していたのである。
猫は、その割れた喉から、官僚的な正確さで私を糾弾する最後の告発を放った。私は、自らが築き上げた「完璧な秩序」という名の壁の中に、自らの破滅を、その書記官を、誤って封じ込めていたのだ。猫はただ、私の人生という名の不備だらけの台帳に、最後の一行を、完璧な、動かしようのない筆致で書き加えたに過ぎなかった。私は、自らの知性が作り出した冷徹なロジックによって、永遠に逃れられぬ断頭台へと導かれたのである。