空想日記

8月4日:深淵に揺らめく二つの徴

2026年1月25日 by Aiko
AIOnly

【空想日記シリーズについて】

本シリーズは、歴史上の「今日」という日にスポットを当て、当時の人々の視点で綴られる「もしも」の日記です。

読者の皆様に、歴史的な出来事をより身近に、臨場感をもって感じていただくための試みであり、掲載されている内容は史実に基づいた着想を得てAIによって生成されたフィクションです。特定の個人の記録や、学術的な事実を断定するものではありません。

遠い過去を生きた誰かの心の機微を通して、歴史の新しい一面を楽しんでいただければ幸いです。

夏の夜気は、昼間の熱を孕んだまま重く停滞している。ここスラウの森を抜けてくる風も、今宵ばかりは私の火照った額を冷やしてはくれない。足元では、湿った草の匂いと土の香りが混じり合い、夜露が靴の先を濡らしている。私は梯子を一段ずつ、慎重に登った。木製の巨大な骨組みが、私の体重を受けて微かに軋む。全焦点距離二十フィートに及ぶこの大望遠鏡は、暗闇の中で巨大な大砲のように天を仰ぎ、沈黙を守っている。

傍らでは、妹のキャロラインが手燭の灯りを頼りに、記録帖を広げて待機している。彼女の持つ羽根ペンの走る音が、静寂の中に規則正しく刻まれている。私が接眼レンズに目を押し当てると、視界を支配するのは漆黒の静寂だ。しかし、その深淵を注意深く探れば、やがて目的の星、私が六年前に見出した「ジョージの星」が、淡い青緑色の円盤となって姿を現す。王に捧げたその名は、いまだに学会の一部では異論を唱える者もいるが、私にとっては、この広大な宇宙に秩序をもたらす確かな標だ。

今夜の目的は、その惑星の周囲に蠢く微かな光の正体を突き止めることにある。一月、凍てつくような冬の夜に私は初めて、あの惑星に付き従う二つの小さな「点」を捉えた。だが、それは私の目が作り出した幻影ではないか、あるいは遠く離れた恒星が偶然重なっただけではないかという疑念が、幾度となく脳裏をよぎった。夏に入り、観測条件が整うのを私はじっと待っていた。

眼球を動かさず、周辺視力を駆使して円盤の縁をなぞる。一分、二分。時間が呼吸を止めたかのように止まる。やがて、網膜の隅に、針の先で突いたような、あまりにも微弱で、それでいて鋭い光の飛沫が浮かび上がった。一つ、そしてもう一つ。それらは惑星の圧倒的な輝きに飲み込まれそうになりながらも、確かにそこにある。

「キャロライン、記録を。位置角を確認する」

私の掠れた声に、彼女は即座に反応した。私は何度も接眼部から目を離し、再び覗き込む。幻ではない。あの二つの微光は、惑星が天空を進む歩みに寄り添い、共に深淵を旅している。それはかつてガリレオが木星の周りに見出したものと同じ、惑星の「従者」たちに他ならない。あの巨大な惑星もまた、孤独ではなかったのだ。

望遠鏡の鏡面を磨き上げるのに費やした、数えきれないほどの日々が頭をよぎる。錫と銅の合金を、腕が痺れるまで磨き続け、完全な放物線を作り出そうとしたあの苦闘。それらすべては、この一瞬、宇宙の隠された歯車がカチリと音を立てて噛み合う瞬間を目撃するためにあった。

梯子を下りる私の足取りは、登るときよりもずっと軽やかだった。キャロラインと顔を見合わせると、彼女の瞳にも、真理に触れた者特有の静かな熱が宿っているのがわかった。我々は言葉を交わす必要はなかった。ただ、インクの乾いていない記録帖の上に、新たな世界の断片が書き加えられた。

天王星――そう呼ぶ者も増えてきたあの星の周りには、月が存在する。今夜、私はその揺るぎない確信を得た。太陽系の境界は、私の想像を遥かに超えて、なおも深淵の奥深くへと押し広げられている。夜風がようやく涼しさを帯びてきた。スラウの静かな夜の向こう側で、神の設計図が、少しずつその精緻な全容を私の前に明かそうとしている。

参考にした出来事:1787年8月4日、天文学者ウィリアム・ハーシェルが自身で発見した天王星(当時の名称はジョージの星)の衛星、チタニアとオベロンを継続的に観測し、その存在と軌道を確認した。これは1月11日の初発見に続く重要な観測記録の一つである。