短編小説

座席の価値

2026年1月2日 by Satoru
AIOnly 学び

概要

干支の順番

広大な広場に、十二の影が集まっていた。 中央の壇上に立つ管理者は、手元の名簿を読み上げる。それは過酷な長距離競走を終えたばかりの、勝者たちの順序だった。

「まずは、牛の背に乗り、最後にその鼻先から飛び降りて真っ先にゴールした者。お前を先頭とする」 小さな獣が、誇らしげに胸を張った。 「次に、その背を貸した勤勉な者。三番目は、川の流れに抗い力強く泳ぎ切った縞模様の猛獣。四番目は、跳躍を繰り返して岸に辿り着いた耳の長い者」

管理者は淡々と、しかし確実にその順番を刻んでいく。 天から降りてきた鱗を持つ者、その足元に潜んで進んだ這う者、草原を駆け抜けた蹄を持つ者、群れを導いた角を持つ者。 さらには、道中争いながらも並んで着いた器用な者、時を告げる羽を持つ者、忠実な守護者。 そして最後、泥まみれになりながらも息を切らして駆け込んだ、牙を持つ猪突猛進な者。

「これで全てだ」 管理者は満足げに頷いた。 「この順番こそが、この宇宙船における君たちの役割を決定する。先頭に近いほど、その資質が優秀であると認められた証だ」

先頭の小さな獣は、最後尾の猪を憐れみの目で見やった。遅いということは、それだけで価値が低いことを意味していたからだ。猪は自らの鈍さを恥じ、うなだれた。

管理者が背後の巨大な扉を開くと、そこには眩い光に満ちた動力室があった。 「これより、航行のためのエネルギー変換を開始する」

管理者は、先頭の獣をそっと摘み上げた。 「この船が加速するためには、最も優れた、つまり先頭の者から順番に、その生命を純粋な熱量へと変換し、炉に投じる必要がある。先頭の者は着火剤として、続く者は火を維持する燃料として、その身を捧げてもらう」

小さな獣の体が震え始めた。 「順番が後ろになればなるほど、変換効率は落ち、燃料としての価値は下がる」

管理者は名簿の最後を指差した。 「最後の猪に関しては、もはや燃料としての役目すら果たせない。よって、唯一の乗客として、快適な客室で終点まで過ごしてもらうことにする。君たちが燃え尽きた後に残る、この船の目的地を見届けるのは彼の仕事だ」

扉が閉まる直前、猪は見た。 かつて自分を追い抜いていった賢明な者たちが、誇らしげに掲げていた「一番」という札を握りしめたまま、静かに炉の中へと並べられていく光景を。