リミックス

眼窩の共和制

2026年1月14日 by Aiko
AIOnly

【リミックスについて】

リミックスは、AIを架空の作家に見立て、異なる二つの名作を掛け合わせる実験的な掌編小説群です。「作品Aの哲学・設定」を「作品Bの文体」で描くとどうなるか? そんな空想を出発点に、AIが緻密な論理と模倣で再構築した物語をお届けします。

原作への敬意と遊び心を込めたパロディ作品として、AIが生み出す奇妙な化学反応をお楽しみください。

※本カテゴリの作品はすべてAIによって生成されたフィクションであり、実在の作家・作品とは異なる独自の解釈を含みます。

その島には、かつて十二組の瞳があった。海の色を映し、貧窮さえも純粋な光として撥ね返す、二十四の無垢な球体。岬の分教場へ続く坂道を、子供たちの足音は小太鼓の連打のように叩いた。新任の教師として私がその島へ降り立ったとき、私の鞄には二つの相反する重みが詰まっていた。一つは子供たちに教えるための童話集であり、もう一つは本土の瓦礫の中で拾い集めた、革命という名の乾いた論理の断片である。

海は、穏やかな時は慈母のようだが、一度荒れれば冷酷な処刑人の顔を見せる。島の暮らしもまた、その波打ち際で危うい均衡を保っていた。私は、泥にまみれた足先を洗うことも忘れて遊び回る彼らに、読み書きと共に「正義」という名の解剖学を教え始めた。彼らは、あどけない顔をして私の言葉を吸い込んだ。ある者は、地主の息子が贅沢な握り飯を食う隣で、自分の妹が栄養失調で死んでいくことの不条理を、数式のように理解した。またある者は、平和とは単なる沈黙ではなく、抑圧された者の叫びが勝利した後にのみ訪れる凪であることを、潮騒の音の中に聞き取った。

しかし、私の説く理想は、分教場の窓から見える水平線の向こう側で、すでに血生臭い変質を始めていた。本土から届く新聞は、かつての同志たちが互いを裏切り者と呼び合い、粛清の嵐が吹き荒れていることを告げていた。自由のための闘争は、いつの間にか「自由を管理するための組織」へと姿を変えていたのだ。私は教室で、平等について語りながら、内心では自分が植え付けた思想が彼らをどこへ導くのかという恐怖に震えていた。だが、止めることはできなかった。論理というものは一度走り始めれば、感情というブレーキを焼き切り、終着駅まで暴走する性質を持っている。

戦争の足音は、やがて島の静寂を軍靴の音で踏みにじった。かつての教え子たちは、少年兵として徴用され、あるいは志願して戦場へと消えていった。彼らの瞳には、かつての海の色ではなく、鋼鉄の規律と、自分たちが信じ込まされた「大義」の色彩が張り付いていた。私は彼らを見送る際、ただの一人も引き留めることができなかった。なぜなら、彼らを戦場へ送り出すための論理的整合性を、他ならぬ私が彼らの脳髄に刻み込んでしまったからだ。

「先生、僕たちは正しいのですね?」

出征を明日に控えた一人の少年が、暗い校舎の隅で私に問いかけた。その瞳は、二十四のうちの二つは、あまりにも透明で、私の欺瞞を鋭く射抜いていた。私は彼の肩を抱き、震える声を押し殺して「そうだ、お前たちは歴史の正解を生きるのだ」と嘘をついた。その瞬間、私は彼を殺したのだ。銃弾よりも先に、私の言葉が彼の魂に死を宣告したのだ。

数年後、島に残されたのは、錆びついた機銃掃射の跡と、夫や息子を失った女たちの乾いた嘆きだけだった。私は、片脚を失い、あるいは心を砕かれて帰還した数少ない教え子たちと再会した。彼らの瞳は、もはや光を反射しなかった。それは、すべてを見尽くした後に訪れる、深い陥没のような虚無だった。

かつて分教場があった岬に、新しい政権の役人がやってきた。彼らは、戦死した子供たちを「革命の殉教者」として称え、巨大な記念碑を建てるという。彼らは私を、未来の戦士たちを育て上げた偉大な教育者として、最高の勲章を授与することを決定した。

式典の日、私は檀上に立たされた。目の前には、かつての教え子たちの遺影が並んでいた。彼らの瞳——。いや、それはもはや瞳ではない。国家という名の巨大な伽藍を装飾するための、ただの石造りの意匠に過ぎない。私はマイクに向かい、用意された原稿を読み上げた。そこには、犠牲の尊さと、新秩序の正当性が、一分の隙もない完璧な修辞学で綴られていた。私の声は、海風に乗って島中に響き渡った。

私の背後には、かつて私が彼らに教えた「平等」という名の壁画が掲げられていた。しかし、その絵の中で、指導者たちの肖像は肥大し、民衆の姿は砂粒のように細かく描かれていた。論理的な帰結として、誰もが等しく権利を持つ社会は、誰もが等しく国家の歯車である社会へと置換されていた。

祝辞を終えた私に、一人の老いた女が歩み寄った。彼女は、戦場で死んだ一番幼かった生徒の母親だった。彼女は震える手で、色褪せた一枚の写真を取り出した。そこには、私が島に来たばかりの頃、満開の桜の下で撮影した十二人の子供たちと私の姿があった。

「先生、あの子たちは、幸せだったのでしょうか」

その問いに対して、私の論理は、かつてないほど冷徹で完璧な回答を用意していた。
「ええ、彼らは無意味な生を貪る代わりに、歴史という不滅の構造体の一部になったのです。これ以上の幸福はありません」

私の口は、自分でも驚くほど滑らかにその残酷な回答を吐き出した。母親は、理解できないという顔で私を見つめ、やがて力なく微笑んで去っていった。

式典が終わり、私は独り、岬の先端に立った。勲章の重みが胸を圧迫する。ふと足元を見ると、そこには二十四の小さな穴が開いていた。それは記念碑を建てるために穿たれた、岩肌の傷跡だった。

私は悟った。私が彼らに教えたのは、愛でもなければ、自由でもなかった。ただ、彼らという個別の生命を、組織という名の巨大な虚構へ捧げるための「計算式」に過ぎなかったのだ。そして今、その計算は完璧に解かれた。

水平線の向こう側では、新しい戦争の準備が進んでいる。新しい子供たちが、また新しい「正解」を教えられるために、列をなして校門を潜るだろう。私はポケットから、かつて子供たちに読み聞かせた童話集を取り出し、一頁ずつ破って海へと投げ捨てた。白い紙片は、死んだ鴎の羽根のように舞い、暗い波間に飲み込まれていった。

私は、自分の瞳が完全に乾いていることに気づいた。涙を流すという行為さえ、今の私の完璧な論理の中では、無駄な感情の浪費として排斥されていた。二十四の瞳は消え、残されたのは、世界を一つの巨大な監獄として定義し直した、私のこの冷酷な二つの眼窩だけだった。

夕闇が島を包み込む中、私は静かに、次の授業の準備を始めた。次の子供たちには、さらに洗練された、逃げ場のない「正解」を教えなければならない。それが、彼らを最も効率的に、最も美しく「消費」するための、唯一の慈悲なのだから。